野依良治名古屋大学教授 ノーベル化学賞受賞



野依良治先生のノーベル賞受賞を祝して

日本化学会会長
岩村 秀

 野依良治教授のノーベル化学賞受賞を心よりお祝い申し上げます。

 今回、受賞の対象になったのは、キラル化合物の合成触媒、特に水素化触媒の発明に関するものです。先生のご業績は、一緒に賞を受けたWilliam S. Knowles博士の金属錯体触媒が不斉水素化触媒として有効であることを実証したのをうけて、これをさらに普遍化し、非常に広範なキラル化合物を高効率に生み出す原理を確立したものです。とくに、有機リン化合物とルテニウムの錯体触媒を用いた不斉水素化反応は工業化された例も多く、学術的のみならず実用化の面でも極めて大きな波及効果を生んでいます。また、高い生理活性を有するプロスタグランジン誘導体の合成に非常に効率の高いプロセスを創出し工業化するなど、つねにこの分野で世界をリードする業績をあげてこられました。

 野依先生は、現在当会の次期会長の要職にあり、来年3月には会長に就任される予定です。今後ますますのご活躍を期待したいと思います。

 日本化学会としては、昨年の白川先生の受賞に続き、2年連続の会員の受賞であり、日本の化学の水準の高さが証明されたものと喜んでおります。これを機に化学は期待できる分野、面白い分野であるという世の中の評価が定着し、化学を志望する若者が増えることを期待する次第です。

 日本化学会の本部である化学会館の一階ロビーに、昨年の白川先生のノーベル化学賞受賞を機に、ノーベル賞受賞者の顕彰プレートを掲げました。福井先生、白川先生に続き、野依先生のプレートが掲げられますが、まだまだスペースに余裕があります。我が国には、候補としてあげておかしくない化学者が他にも何人もおり、さらに続くものと期待しております。



The Nobel Prize in Chemistry 2001

2001年度ノーベル化学賞(PDF)