日本化学会は本年(平成15年(2003年))に創立125周年を迎えました。単に「化学会」と称する集まりが明治11年(1878年)に、また、工業化学会が明治31年(1898年)に創立され、いくつかの変遷を経て両会が昭和23年に合併され、今日の社団法人日本化学会が発足いたしました。この「化学会」の創始をもって本会の創立としておりますので、2003年が本会125周年となるわけであります。必ずしも大きくはない組織で始められましたが、その高い志が周りの尊敬を集め、幾多の困難にもかかわらず、この分野の指導的な学会として発展をとげ、現在では3万5千人を超える会員がつどっております。
我が国の化学及び化学工業が国際的に占めている地歩と果たしている役割につきましては、いうまでもなく一流と称して差し支えないものであります。たとえばChemical
Abstractsの2000年の収録では、全体の約1/4の件数が我が国からのものでありますし、会員がノーベル賞をはじめとする数多くの国際的な賞を受賞しております。また、我が国の化学工業はあらゆる生産品の基礎となる素材と材料の開発と製造で世界をリードしております。
「化学」そのものは物質理解のための知識体系であり、「知って理解したい」というわれわれの素朴な欲求に基づくものであります。また、一つの大きな文化を形成しております。しかしながら、利便性と経済発展の追求を急ぐあまり、いくつか必ずしもよいとは言えない影響が副次的に生じたために、この美しい知識体系のさらなる発展に対し、世間一般の認識が決して好意的でないことは憂慮すべきことであります。
化学に対する正しい認識を取り戻すためには、化学者、化学技術者の日頃の活動を広く一般市民に知ってもらうとともに、市民の、化学および化学工業に対する期待と要望を汲み上げることが肝要であります。我が国の科学界、とりわけ本会をはじめ化学界では、学会等の活動が専門家あるいは関係者間の交流に「力」がそそがれ、世間一般への普及と理解の深化への努力は、なされてはいるもののその効果は今一歩の感が否めません。
例を挙げれば、本会では平成11年(1999年)世界に誇る「環境憲章」を制定しましたが、一般市民への周知には到底至っていないのが実情と言えましょう。本会の目指している理想と日々の活動に対する一般市民の、さらには海外の化学者達の理解と協力なしには、本会はもとより、我が国の化学および化学工業のさらなる発展はありえません。
そこで本会では、創立125周年にあたる本年(平成15年(2003年))を化学および日本化学会について、一般市民および海外の化学者の理解を深める年『The
Chemistry Year of Japan, 2003』ととらえ、この記念すべき年をより有意義な年とするため、別掲の企画を実施することと致しました。個々の会員の皆様の心からのご理解とご協力を切にお願い申し上げます。 |
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