Copyright 2003 by the Chemical Society of Japan(2003.4掲載)

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記念式典・記念祝賀会が厳かに、華やかに執り行われました

本年の日本化学会第83春季年会は3月18日(火)〜21日(金)、東京の早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された。その二日目にあたる3月19日(水)に、キャンパスに隣接する「リーガロイヤルホテル東京」で、天皇・皇后両陛下の御臨席のもと記念式典とレセプションが、又、夕刻から常陸宮正仁親王同妃両殿下が御臨席のもと、祝賀会(春季年会懇親会を兼ねたもの)が厳かに、かつ華やかに挙行された

1.1記念式典
 両陛下は午後1時40分のホテル御到着になり、午後2時に招待者等約600名全員が起立して拍手で迎えるなか式典会場であるホテル3階のロイヤルホールに入られた。澤田嗣郎事業企画・記念式典委員長による開会宣言のあと、野依委員長による開会の辞があり、続いて天皇陛下から次のようなお言葉を賜わった。すなわち、初代会長が若干23才であったことへの驚き、明治初めの化学創成期の頃の先駆者達の苦労、彼等を育てた外国人化学者への感謝、太平洋戦争後の日本復興に果たした化学工業の役割、世界の化学界への我が国化学者の貢献、公害問題の発生とそれの改善、環境問題への日本化学会の積極的な取組み、などに言及された。また、福井謙一博士がノーベル賞授賞式後の祝宴で述べられた「私どもは科学のあらゆる分野が、人間に幸せをもたらし、決して災害をもたらさないことを祈るものです」という言葉も引用され、最後に、化学会の会員が我が国と世界の人々の幸せのために貢献していくことを願うと締めくくられた。その後、文部科学大臣の祝辞を御手洗康文部科学事務次官が代読、続いて長倉三郎学士院長ならびに外国からの来賓を代表してアメリカ化学会会長E. Reichmanis博士から祝辞を頂いた。長倉先生は元日本化学会会長でもあり、化学会にひときわ思い入れが熱く、「感情と情熱の萎縮」、「深い思索の欠如」、「競争の激化と人間性の衰退」などを心配されながら、化学会会員が「人類の福祉のための化学」の視点に立ってさらに努力するようにと励まされた。
ここで、両陛下は御退席になられたが、式典の方は午後3時迄続き、海外国際機関・各国化学会代表の紹介があり、続いて外国人名誉会員証の贈呈が野依平成14年度日本化学会会長からなされ、代表してアメリカのR. Breslow教授がお礼のスピーチをし、瀬谷博道・平成15年度日本化学会会長の閉会の辞で無事終了した。海外からの来賓は、P. Steyn IUPAC(国際純正および応用化学連合)会長、B.N. Noller FACS(アジア化学会連合)会長、H. Alperカナダ化学会代表、D. Zhu中国化学会副会長、F. Matheyフランス化学会会長、R. Staudiglドイツ化学会副会長、F. De Angelisイタリア化学会副会長、S.-C. Shim韓国化学会会長、Sir H. Krotoイギリス王立化学会会長、E. Reichmanisアメリカ化学会会長、S.-M. Peng台湾化学会会長であった。さらに、今回来日された外国人名誉会員6名はアメリカのRonald Breslow教授(コロンビア大学)、Daryle H. Busch教授(カンサス大)、Roald Hoffmann教授(コーネル大)、台湾のYuan T. Lee教授(台湾科学アカデミー)、フランスのJean-Marie Lehn教授(ルイ・パスツール大)並びに英国のHarold Kroto卿(サセックス大)であり、この内、後の4人の方々はノーベル化学賞受賞者であった。
 陛下のお言葉は、<宮内庁のホームページ>参照

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<野依会長の挨拶><お言葉を述べられる陛下>

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<会場遠景><長倉学士院長挨拶>

1.2レセプション
 午後、3時20分から小会場でのレセプション(茶話会のようなもの)が開催され、天皇皇后両陛下が外国からの来賓や本会元会長、記念事業関係者、進歩賞受賞者などおよそ100名少しの方々と親しく歓談された。

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<女性研究者達と歓談される両陛下><外国人来賓と歓談される両陛下>

1.3 洋学資料展
 この資料展は、早稲田大学図書館洋学文庫が所蔵する書物、文献、資料、機器などのほか、武田科学振興財団、大阪歴史博物館、大阪の杏雨書屋、および芝教授が保管するさまざまな資料を合わせて展示したもので、化学だけに限らず、江戸時代後期の蘭学を中心とする日本の科学の先駆者たちの業績を肖像画と共に紹介したものである。たとえば、大槻玄沢改訂による重訂解体新書および図編、杉田玄白肖像、芝蘭堂新元会図など重要文化財に指定されている資料も5点展示された。ここで新元会図とは、大槻玄沢の私塾芝蘭堂で当時の蘭学者達が日本で初めて太陽暦の元日を祝った様子(「おらんだ正月図」ともいわれる)を描いてたものである。化学関連では、宇田川榕菴の「舎密開宗」やその翻訳の底本となったオランダ語のイペイの著「初歩愛好者の化学」などが展示された。一方、1869年に大阪に発足した大阪舎密局関連の資料として、舎密局の模型やそこで教鞭をとった我国近代実験化学の父とされるオランダ人で初代教頭ハラタマ(K.W. Gratama)の胸像などが展示された。
 この資料は、天皇皇后両陛下、ならびに常陸宮殿下・妃殿下にご高覧にただいた。

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<多田早大教授のご説明を聞かれる両陛下><地図をご覧になる両陛下>

1.4 記念祝賀会
 夕刻6時からホテル3階のロイヤルホールで、春季年会の懇親会との合同で記念祝賀会が常陸宮正仁親王殿下と同妃殿下の出席のもとに開かれ、殿下には学生時代からの長年にわたる会員としての本化学会活動への尽力に対し、特別名誉会員証が野依委員長から贈呈された。それに対し、殿下のお言葉があり、自らが学生会員になった頃と現在とではDNA研究に格段の進歩があることを述べられ、また、今後さらに新しい機能を有する化合物や薬の合理的な開発に化学者の役割がより重要になってくると言及された。最後に、特別名誉会員に推載して下さった会員の皆様に心より謝意を表すると同時に、微力ながら日本化学会のために尽くしたいと締めくくられた。会場では昨年6月に結成された日本化学会会員による化学オーケストラ”Orchestra Chimica”の華やかな演奏が披露され、和やかな雰囲気の中で約500人の会員諸氏が両殿下と、また、友人達といつも通り賑やかに談笑した。両殿下は午後7時に御退席されたが、その後も祝宴は続き、IUPAC、FACS、各国化学会の会長が次々と挨拶に立ち、賑やかな内に午後8時に祝賀会を終了した。

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<相澤春季年会実行委員長挨拶><殿下へ特別名誉会員証を贈呈>

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<舘記念事業実行副委員長の乾杯><化学オーケストラ>